「異相の木」(その9)
カートリッジの話に戻そう。
カートリッジに、異相の木はあるのだろうか。
「異相の木」、それもオーディオにおける異相の木について書こう、と思ったときから、
私の頭の中では、スピーカーの中から異相の木を探そうとしていた。
そして、私にとっての「異相の木」はJBLのD130ということに気がついた。
いま、どうしてそうしたんだろう、と振り返っている。
スピーカー以外のジャンルでも、
アンプにしてもアナログプレーヤーにしてもカートリッジにしても、
これらに較べると歴史の浅いCDプレーヤーにしても、
衝撃をこちらに与えてくれたモノはいくつもある。
でも、それらが異相の木なのか、というと、違う。
なぜ、違う、と感じるのだろうか。
JBLはアンプは手がけていた。
けれどスピーカーと同じ変換器であるカートリッジは手がけていない。
イギリスにはスピーカー専門メーカーとして、JBLとよく比較されるタンノイがある。
タンノイもアンプを一時期手がけていたことがある。
タンノイのカートリッジは存在しない、と思われている方も少なくないようだが、
私も実物は見たことはないのだが、一時期カートリッジを手がけていた。
きちんとしたコンディションのモノであれば、ぜひ聴いてみたいカートリッジのひとつである。
タンノイのカートリッジだから、
タンノイの同軸型ユニットに匹敵するような技術がそこに投入されていたのではない、と思う。
そうであってもスピーカー専門メーカーのつくるカートリッジは、
そのメーカーのスピーカーに対して関心をもっていれば、やはり興味深い存在である。
だがJBLは、いちどもカートリッジをつくっていない。