Date: 9月 14th, 2012
Cate: ナロウレンジ
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ナロウレンジ考(その9)

ソプラノ歌手の再生といっても、基音だけでいえばそれほど広い音域を必要とするわけではない。
声楽の音域は、バスが82.4〜261.6Hz、バリトンが97.9〜349.2Hz、テノールが130.8〜391.9Hz、
アルトが196.0〜587.3Hz、メゾ・ソプラノが261.6〜783.9Hz、
そしてソプラノが329.6〜1046.5Hzとなっているから、
バスの最低音からソプラノの最高音までほぼ4オクターヴは、
1kHzよりも低いところにあり、意外にも、というべきか、それほど高い音は出ていないように思える。

これはあくまでも基音であって、楽器も人の声も倍音が発生する。
この倍音を含めて、周波数レンジはどの程度必要なのか、を楽器別にまとめた、
W.B.スノウによる実験データがある。

このスノウの実験データは、周波数レンジをどこまで狭めていくと、
もとの楽器、もしくは人の声の音色が損なわれるかを表しているもので、
女性言語は200Hzよりも少しひくいところから10kHzまで、となっている。

スノウの、この実験データは、たしか1931年に発表されたものであるから、
ずいぶんと古いデータであり、現代のシステムで実験をすれば、多少値に変動が出てくるかもしれないけれど、
目安としては、それほどの変化はないように思う。

女性の声に関しては、10kHzまできちんと再生されていれば、
音色の再現に支障をきたすわけではない、ということになる。

10kHzまでなら、
いま市販されているスピーカーのうち、
オーディオマニアを対象としたスピーカーシステムの大半(ほぼすべてといってもいいだろう)は、
楽々クリアーしている数字である。
さらに10kHzよりも周波数レンジが延びていれば、もっと音色の再現性は精確になっていくはずなのに、
一部のワイドレンジ型であり、音場型とも呼ばれているスピーカーシステムの中には、
くり返すが、ソプラノ歌手を正体不明にしてくれるモノがある。

そして、このこともまたくり返すが、レンジの狭いフルレンジのスピーカーのほうが、
ずっとはっきりとソプラノ歌手が誰なのかをはっきりとさせてくれることがある。

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