D130とアンプのこと(その16)
ヤマハのB4の出力インピーダンス可変機能に、
真空管アンプ時代のときのダンピングファクター可変機能と同じようにプラスしていくだけでなく、
-1Ωという、マイナスしていくようにしたのは、スピーカーケーブルの抵抗成分を打ち消すためである。
B4は1978年の新製品である。
このころはスピーカーケーブルで音が変ることがすでにひろく常識となりつつあったころである。
そしてケーブルによって音が変化するというのであれば、
ケーブルの理想はケーブルが、つまりは存在しないこと、長さ0mということであり、
それに近づけるためにオーレックスとトリオはリモートセンシング技術を応用して、
スピーカーケーブルまでもNFBループに含めてしまった。
オーレックスの方式はクリーンドライブ、トリオはシグマドライブと名付けていた。
これらの技術はB4よりも約2年あとに登場している。
たしかフィデリックスもリモートセンシングは採用していた、と記憶している。
クリーンドライブは通常のスピーカーケーブルのほかに1本ケーブルを追加、
シグマドライブは2本追加することになる。
スピーカーケーブルまでがNFBループに含まれるということは、
NFBループが長くなってしまう、ということでもある。
アンプの中だけの済んでいたNFBループがアンプの外にまで拡がってしまい、
そのためループの大きさはスピーカーケーブルの長さによっては、
アンプ内だけのときと比較すると何倍にもなってしまう。
クリーンドライブは聴く機会がなかったけれど、シグマドライブは何度か聴く機会はあった。
確かに、その効果はあるといえばある。理屈としては間違っていない、と思う。
ただ、スピーカーケーブルの種類、その長さ、引回し方、それとスピーカーケーブルをとりまくノイズ環境、
これらによって、ときとしてシグマドライブにしてもクリーンドライブにしても不安定になることも考えられる。
その点、ヤマハのB4はスピーカーケーブルの抵抗成分だけを、
アンプの出力インピーダンスをマイナスにすることで打ち消し、
ケーブルの長さ0mに疑似的に近づけようとしているだけに不安定要素は少ない。
もっとも抵抗成分を打ち消しても、ケーブルのパラメータとしてはほかの要素がいくつも絡み合っていて、
それらに対してはクリーンドライブやシグマドライブのほうが有効といえる。
ヤマハにしてもオーレックス、トリオにしても、
このとき、これらのメーカーはスピーカーケーブルをアンプ側に属するものとして捉えていた、ともいえる。
別項「境界線」で書いていることとも関係している。