D130とアンプのこと(その11)
パワーアンプとスピーカーのあいだに抵抗を挿入する手法は、
いまではほとんど話題にならないけれども、
私がオーディオをやりはじめたころにはまだ雑誌で見かけることもあった。
抵抗を入れればダンピングファクターがコントロールできる。
けれど、というか、当然ながら、というか、
それまでなかった抵抗がそこに加わるわけだから、挿入された抵抗器の固有音が加わることになる。
どんな手法にもメリットとデメリットがあるわけで、
その手法をどう判断するかは、自分にとってデメリットよりも、もたらされるメリットが大切がどうかである。
この手法も抵抗器に良質なものを選べば、いまも試してみる価値(というよりも面白さ)がある、と思う。
実際にやる場合に注意すべき点は抵抗値が大きくなればなるほど、
その抵抗による電力損失が大きくなるということで、抵抗の容量の大きなものを必要とする。
オームの法則から電力は電流の二乗×抵抗値だから、
高能率のスピーカーでしかも音量の制約つきであれば、
デールの無誘導巻線抵抗の容量の大きなもので、いくつか抵抗値を変えて実験してみて、
その音の変化を自分のものとできれば、いい経験(勉強)になる。
オーディオマニアはどうしてもなにか比較したときに、どちらが音がいいかの判断をすぐにしがちだが、
ときに大事なのは、どちらがいい音かではなくて、そこでどういう音の変化をしていくのか、
そのことを経験値として自分の中に蓄積していくことである。
蓄積していったことはすぐには役に立たないことの多い、と思う。
それでもいろんなことを試してみて、そうやっていくつものパラメータを自分の中に蓄積していく。
それが、あるレベルを超えれば、それまでどちらかといえばやみくもにやってきていた使いこなしに、
光が射し込んでくる瞬間がきっとくる。
いい音で聴きたいという気持が、ときには音の判断にあせりを生じさせる。
いい音を出すということは、人との競争ではないのだから。
だからこそ先を急がないでほしい、と思うことが最近多くなってきたのは、
そういう空気が色濃くなりはじめてきているのか、それとも私が歳をとったからなのか……。