the Review (in the past)を入力していて……(続々続・作業しながら思っていること)
トリオ・ブランドでの製品、ケンウッド・ブランドの製品の中からひとつ選ぶのは、
プリメインアンプのKA7300Dである。
1977年当時、78000円だった、いわば中級クラスのプリメインアンプが、
いまも欲しいトリオのオーディオ機器である。
L02T、L02Aの例を持ち出すまでもなく、このころのトリオはケンウッド・ブランドで意欲的な製品を出していた。
完成度の高いモノもあったし、どこか実験機的な未消化の部分を残したモノもあったけれど、
ケンウッドは次はどんなアプローチをしてくるんだろうか、という楽しみ、期待もあった。
そういうケンウッド・ブランドの製品と較べると、KA7300Dには際立った特徴はない、といえばない。
トリオ・ブランドの他の製品と較べても、どこか際立っているところがあるかといえば、あまりない。
型番末尾のDからわかるように旧作KA7300をDCアンプ化したKA7300Dの登場は私が中学3年のとき。
いつかはマークレビンソンLNP2、SAE Mark2500……、そんなことを妄想している日々において、
KA7300Dはがんばれば手の届きそうなところにいてくれた、良質なアンプだった。
KA7300DとKEFの104aBを組み合わせることができたら─……、この組合せを手に入れることができたら……、
そんなことを思っていたから、いまでもトリオのオーディオ機器として真っ先に頭に浮び、
そして欲しいと思うのは、このKA7300Dとなってしまう。
このころのトリオのプリメインアンプは型番の下三桁の番号によって、
設計者が違うためなのか、音の傾向も異る、といわれていた。
300がつくシリーズはクラシックがうまくなるプリメインアンプだったようで、
KA7300Dの上級機としてKA9300もあった(価格は150000円)。
KA9300の音は聴いたことがないけれど、評判の良かったアンプである。
KA7300Dと聴き比べれば、そこには値段の差がはっきりと音に表れてくるだろうが、
KA9300には思い入れもないし、なぜか欲しいと思ったことは一度もない。
KA9300ならば、ケンウッド・ブランドのL01Aが、その後に透けて見えてくる感じがあるからだろうか。
いま冷静に振り返ってみても、この時代のプリメインアンプは充実した内容のモノが割と多かったと感じる。
だからといって、それより後に登場したアンプよりも音がいい、というわけではない。
いまとなっては旧いアンプだし、中級機だったからそれほど耐久性のあるパーツが使われているわけでもない。
手入れも必要となってくる。内部に手を入れることになったら、私だったら、少し手を加えることになる。
面倒といえばたしかにそうなんだけれども、この時代のプリメインアンプのいくつかは、
そうやって使ってみるのも楽しいだろうな、と思わせてくれる。
KA7300Dは、私にそう思わせてくれるプリメインアンプの中で、価格的に安いモノだ。