Date: 6月 26th, 2009
Cate: 黒田恭一
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バーンスタインのベートーヴェン全集(その6)

カラヤンのベートーヴェン全集の録音は、もしいまカラヤンが生きていたとしても、
同じことはやらせてもらえないだろうと誰もが思うくらいに、綿密な計画性による贅沢なものである。

第六番は1976年10月のたった一日の録音で終了しているが、
のこりの8曲は、2回もしくは3回の録音が行なわれている。
第一番、二番から録音はスタートしたようで、1975年1月に第一回のテークを行ない、
75年中に六番以外の録音を行なっている。
これらは、全集を完成させるための検討用の録音であり、レコードにするための録音ではない。

これらの録音を終えたあとで、約3ヶ月の冷却期間をおき、
リハーサルをやり直すとともに全9曲を見通しながら、細部にわたる検討を重ね、
いわゆるオリジナル版と呼ばれるレコードに仕上げるための録音を開始している。

第一番、二番は、その後、76年10月から翌77年1月にかけてオリジナル版の録音、
77年3月に部分的な録音がさらに行なわれているとのことだ。

一番から九番までを、ひとつの大曲として捉えるための検討用録音なのだろう。

カラヤンは、ドイツの音楽評論家ヨアヒム・カイザーのインタビューで、以下のようなことを語っている。
     ※
今度の交響曲録音に対し、全く新しいやり方を選んだのです。普通の場合、いくつかのセッション(2時間程度の録音)を積み重ねて録音し、すぐ同時にすべての悪い細部をなおしていきます。今回は全く別の過程がとられました。3ヶ月のうち、この未加工版ともいうべき第1回録音を、細部に注意しながら聴きました。演奏の行なわれている時にはすべての細かいところまで注意することは不可能です。指導者はいつも先行して考え、感ずる必要があるからです。今、正確に聴き直してみると、まだ充分彫琢されていないと思われる箇所が出てきました。この聴取ののち、我々はまずこの録音について原則的なことを討論しました。この新録音について、ここで響いてくるような具合からして、音響空間はこれでいいのかどうか? 何を改良すべきか? 多くの点において、我々はずっと良くすることができたと思うのです。

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