岩崎千明氏のこと(その14)
ステレオサウンド 39号のカートリッジの試聴に、
井上先生はダイレクトカッティング盤を中心に選ばれている。
岡先生は、とうぜんのことながら、クラシックのみで、ポリーニによるシェーベルクのピアノ作品集、
アルゲリッチのショパン、カラヤンの「オテロ」、
ブレンデルとハイティンクによるブラームスのピアノ協奏曲など7枚。
その他にいくつかのカートリッジでは、さらに別なレコードも使われている。
井上先生も岡先生も、1976年当時の、比較的新しいレコードを中心に使われているが、
岩崎先生は違う。
まずジャズ、ロックを中心で、しかもジャズは、新しいものとステレオ初期とモノーラルの50年代初期もの、
さらに40年代以前の古いものと、録音年代で4種類を試聴レコードとして選ばれている。
レコードについて、次のように語られている。
※
最新録音盤は、周波数特性とかスペクトラム的な判断に価値があったとしても、ステレオ感となるとかえって作為的で,良さの判断にはつながらず、苦労の種でしかない。ステレオ初期のレコードはこの点正直だ。50年代のジャズレコードのもつ特色は、そのまま「ジャズサウンドは、いかにあるべきか」を端的に示して、再生音楽におけるジャズ的視点を定めるのに好適といえる。古い録音のナローバンドのSN比の悪いSPリカット盤は、音楽以外の雑音や歪がどれだけ抑えられ、音楽を楽しむのに邪魔されずにすむか、を確かめるのに役立つ。現代的な意味で音の良いカートリッジが必ずしも雑音を抑えてくれるとは限らず歪も目立つ。
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試聴レコードは以下のとおり。
●「ワン・フォー・ザ・デューク」
エリントン/レイ・ブラウン
パブロ(英国盤)
●「ヴィレッジヴァンガードのソニー・ロリンズ」
ブルーノート(アメリカ盤)
●「イン・コンサート」
クリフォード・ブラウン/マックス・ローチ
マーキュリー(アメリカ盤)
●「ソロ・フライト」
チャーリー・クリスチャン
アメリカ・コロムビア盤
●「ブルー&グレー」
ローリング・ストーンズ