オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(批評と評論・その1)
ステレオサウンドの試聴室には、リファレンス機器と呼ばれるモノがつねに置いてある。
私がいたときはそうだったし、おそらくいまもそのはずだ。
私がいたころ、1980年代のステレオサウンドのリファレンス機器は、
スピーカーシステムはJBLの4343、そして4344だった。
アナログプレーヤーはパイオニアのExclusive P3aで、
そのあとマイクロのSX8000IIとSMEの3012-R Proの組合せだった。
カートリッジはオルトフォンのMC20MKIIだったころもあるし、SPU-Goldを使っていたときもある。
また試聴さる方によってもカートリッジは随時変っていた。
アンプはマッキントッシュのC29とMC2255の組合せから、アキュフェーズの組合せへ変っていった。
私がステレオサウンドに入る前は、マークレビンソンのLNP2がリファレンスだった。
一度、読者の方からの電話があった。
「誌面ではかなり高価な製品を高く評価しているのに、なぜそれらの製品をリファレンス機器として使わないのか」
こういった内容の問合せだった。
1980年にトーレンスのリファレンスが登場して以来、
そのメーカーの旗艦モデルの型番に、Reference とつける例がいくつかあった。
そういう製品のイメージからすれば、リファレンスというものは、その時点で最高のモノという捉え方もしたくなる。
けれどreferenceの意味は、参考・参照。
そこには最高、最優秀という意味はない。
試聴における、ひとつの基準としての存在がリファレンス機器である。
もちろん、ひどい音であっては困るし、できるだけいい音であってほしい。
それに性能的にも優れていなければならないけれど、その時点での最高の性能でなければならない、
ということはリファレンス機器にはそれほど求められていない。
それよりもあるレベルの性能(音をふくめて)の高さを、
つねに安定してい維持できるか、ということが優先される。