真空管アンプの存在(その44)
アンプメーカーは、五味先生がやられていた真空管選別はコスト高につながるため無理だとしても、
あるレベルのクォリティをもつ真空管を大量に確保しておく必要がある。
アンプ製造のために必要であるだけでなく、修理のため戻ってきたアンプのためにも、
メーカーの責任として、かなりの数のストックが必要となる。
その苦労は、マランツ、マッキントッシュが真空管アンプを製造していた時代よりも、
いまははるかにたいへんなことである。
長島先生もSPA1HLの開発では、ここで苦労されたと思う。
昔の良質なECC83を挿せば、比較的容易に実現できるSN比を、1980年代後半に大量に入手できるECC83で、
#7と最低でも同じレベル、もっと高いSN比の実現を求められていたはずだ。
そうでなければ、「マランツ#7への恩返し」という言葉は、長島先生の性格からして使われない。
私は、長島先生とのおつきあいから、そう信じている。
いま大量に入手できる真空管での高SN比の実現──、
初段の並列接続は有効な手段だったはずだけに、私は「試された」、と推測した。