オーディオにおけるジャーナリズム(その12)
定期刊行物の編集者ならば、つねに心掛けている(はず)のは、
創刊号から最新号まで愛読してくれている読者もいれば、
途中からの人もいるし、最新号をはじめて手にするという読者がいるということだ。
最新号がはじめてという読者でも、若い人もいれば年輩の方もおられよう。
年齢の違いは、キャリア、レベルの違いにもつながっている(ただし必ずしも、ではない)。
ある特定の趣味を専門とする雑誌で、ある程度の歴史をもつとなると、この兼合いが難しい。
はじめての読者のレベルに合わせてしまっては、読みつづけてくれている読者には物足りなくなるし、
反対のことも言え、このことは私がステレオサウンドにいるときから(それ以前から)の、
他の雑誌編集部にとっても、大きな課題である。
読者の多くがバックナンバーに興味をもってくれるわけではない。
持ってくれた読者のすべてかバックナンバーを実際に手にされるわけではない。
それは非常に少ない割合だ。
それにバックナンバーも、そんなに古いものまでは、簡単には手に入らない。
読者の関心は、つねに新しいものに向きがちだ。
解決策のひとつとして、弟分に当たる雑誌創刊がある。
とはいえ、ひとつの編集部が、兄貴分にあたる雑誌と弟分の雑誌の両方を手がければ、
課題は解決されるが、なかなかそうはいかない。
やはり独立した、ふたつの編集部になってしまう。それぞれのカラーが生じて、
雑誌が抱えてきている課題を解消することとは、そう容易くなり得るものではない。
それに弟分の雑誌にも、同じ課題が生じてくる。
だがそれも、いまでは過去の課題でしかない。
インターネットのこれほどの普及と機能の充実、扱いやすさの向上によって、
本来ならば、とっくに解決していたはずなのに、実際にはまだ課題は生きのびている。