五味康祐氏のこと(その11)
五味先生のオーディオと長島先生のオーディオには、いくつかの共通点がある。
まずお使いのスピーカーユニットは、タンノイもジェンセンのG610B、どちらも同軸型の15インチで、
エンクロージュアもバックロードホーンという点が共通している。
長島先生のスピーカーはコーナー型ではないが(正確に言えば、セミコーナー型といえる形状)、
部屋を横方向に使われ、左右のスピーカーの間隔をできるだけ広げられる意味もあってだろうか、
そして低音に関しての意味合いも含まれているようにも思えるが、ほぼコーナーに設置されている。
オートグラフは、いうまでもなくコーナー型である。
どちらもスピーカーも、指向性は意外に狭く、最良の聴取位置はピンポイントだ。
あとは、おふたりともアンプは真空管アンプである。
五味先生はマッキントッシュのC22とMC275、長島先生はマランツの#7と#2の組合せ。
だから、おふたりの音には共通しているものがある、とは言わないし、これだけでは言えないことだ。
これらのことは、たまたまの偶然だろう。
それよりも、大事なことは、どちらもたったひとりのための部屋であり、音である、ということだ。
五味先生の部屋は、ステレオサウンドに掲載された写真でしか知り得ないが、
五味先生ひとりのための部屋という印象が、まずある。
長島先生の部屋に訪れたときも、雑然としているところも含めて、やはりひとりのための部屋という印象を受けた。