40万の法則が導くスピーカーの在り方(その3)
B&Oのラジオは、私も見たことないし存在としてはマイナーである。
もうすこし名が知られているものとなると、クレデンザがある。
クレデンザなんて見たことないという人はおられるだろう。
けれど「クレデンザ」という固有名詞をこれまでいちども聞いたことがないという人はおられないと思う。
クレデンザは、アメリカのヴィクターが1925年11月2日にニューヨークで発表した
アクースティック蓄音器のことだ。
アクースティック蓄音器にはスピーカーはない、とうぜんアンプもない。
ピックアップが拾った振動がそのまま音になる。
だから、より大きな音量を得るためにはホーンが必要になってくる。
クレデンザは蓄音器としてもっとも大きな部類である。
つまりクレデンザの大きさはほほすべてはホーンを収めるためのものである。
より大きな音で、より低い音まで、を追求した分割折曲げホーンが収められている。
このクレデンザの周波数特性のグラフが、
ステレオサウンドから1979年に発行された池田圭氏の「音の夕映え」に載っている。
これが見事に40万の法則そのままの特性といえる。
低域はほぼ100Hzまでで、ここから下は急激に音圧が下っている。
高域も2kHzあたりとくらべるとすこし音圧は低下しているものの、ほぼ4kHzまで延びていてる。
100×4000で40万となる。
クレデンザの40万の法則は偶然なのか、それとも意図的なのか。
はっきりとしないところがあるが、クレデンザの折曲げ分割ホーンを開発したのはウェスターン・エレクトリックで、
クレデンザの登場と同じ年に特許をとっている。
つまり設計はウェスターンエレクトリック、製作がヴィクターとなる。
だからなのか、クレデンザのサウンドボックスのかわりにウェスターン・エレクトリックの555を、
何の加工もせずに、じつに簡単に取りつけられる。