モノと「モノ」(その6)
LPの生産量が増えている、というニュースを最近目にした。
これはLPというモノとしての魅力が見直されてのことなのかもしれない。
だが、いまプレスされているLPとLP全盛時代のLPとでは、見た目は同じでも、同じとはいえない面もある。
いま日本でプレスされているLPが、どういうふうにつくられているのか、
信頼できる人から聞く機会が数年前にあった。
あくまでも、これから書く話、その数年前のことであり、いま現在は変っているのかもしれないし、
数年前と同じままなのかは確認できていないことをことわっておく。
このLP工場には、アナログのテープデッキがない、ときいた。
LP全盛時代には、カッティングマシーンも数台、マスターのテープデッキの数台置いてあるのがあたりまえだった。
かなり古い記事になるが、1967年のステレオ誌の記事によると、東芝音楽工業の川口工場には、
カッティングマシーンとしてスカーリーのカッティングレーサーにウェストレックスの3Dカッターヘッドの組合せ、
ノイマンのカッティングレーサーにウェストレックスのカッターヘッドの組合せ、
それにノイマン純正の組合せ(カッターヘッドはSX15とSX45)、
計4つのカッティングマシーンがあり、それぞれにテープデッキも用意されていた。
そのころといまとでは時代が違うことはわかっている。
けれどLPをつくる工場にカッティングマシーンはあってもテープデッキがないという事実には、唖然とする。
その工場でつくられるLPの多くは、CD-Rで音源を持ち込まれるとのことだ。
中には、気合いの入っている会社もあり、マスターテープとともにテープデッキも持ち込むところもあるそうだが、
マスターがアナログ録音のLPをつくるにも、
CD-R(一度デジタル化したもの)がその音源になってものが、市場に流通している。