ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その48)
「HIGH-TECHNIC SERIES 3」の鼎談で、井上先生は、
JBLの2405の音を、トランジスターアンプの音に、
ピラミッドT1の音を、管球アンプの音にも喩えられている。
2405は景色を切り張り風に見せるために、奥行はあるけれども、それは平面の展開になってしまう。
T1は立体のまま音像を空間に置いたという感じで、奥行に厚みが出る。
ここで言われている井上先生のトランジスターアンプと管球アンプの喩えは、
あくまでも1978年当時のことだということは、忘れないでいただきたい。
2405はトランジスターアンプのように、くっりきと音像が定位する、のに対して、
T1は管球アンプの特長のように立体感の音像が定位すること、については、
実は瀬川先生もそのとおりだと認めながらも、
2405は切り張りであるがゆえに輪郭がとてもはっきりしてくる、
それはごまかされていると知りながらも、縁の線がキチンとカミソリで切ったようにピリッとしていたほうが、
つまりT1の自然な立体感よりも、おもしろいから、2405をとりたい、と言われている。
「HIGH-TECHNIC SERIES 3」の鼎談を、1978年当時,私は瀬川先生側から読んでいた。
このころはGASのアンプの音よりもマークレビンソンのアンプの音に、魅力を感じていた。
それは音だけでなく、アンプそのものの魅力として、GASよりもマークレビンソンが、私のなかでは上にあった。
図太い音はもちろん論外だが、自然な立体感の音よりも、平面的であっても切り張りの音の面白さに惹かれていた。
そして、それが求めている音だ、とも思っていた。