ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その46)
1978年暮に出たステレオサウンド別冊「HIGH-TECHNIC SERIES 3」は、トゥイーターだけを扱った一冊だった。
巻頭の記事は、JBL4343のトゥイーターを5つのトゥイーターに置き換えて聴いてみるという記事で、
井上卓也、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏による鼎談で構成されている。
まず純正の2405を内蔵のネットワークではなく、トゥイーターに専用アンプ、
残りのバッドハイ、ミッドバス、ウーファーの3つのユニットは4343内蔵のネットワークを通して、
というバイアンプ駆動による試聴から始まっている。
集められたトゥイーターは、パイオニアのPT-R7、テクニクスの10TH1000、YLのD18000、
マクソニックのT45EX、それに新顔といえるアメリカ・ピラミッドのT1。
私がくり返し読んだのは、ピラミッドのT1のところ。
T1は、まず高価だった。それも飛び抜けて高価だった。
2405が当時は37000円、PT-R7が41800円、10TH1000が65000円、D1800が45000円、
T45EXはトゥイーター本体は75000円、励磁型ゆえに電源が必要で、それが28000円、
T1は199500円していた(いずれも1本の価格)。
この高価なT1をつけた4343の音を、黒田先生と井上先生のおふたりは、
「一番気に入りました」、「ケタはずれによかった」と、
その価格に見合う以上の高評価をされているのに対して瀬川先生は、
音の出し方としてはT1の方が、2405よりも正確になっていくけれど、物足りなくなる、といわれている。
そして、レコードの世界というのはつくりものの世界であったということが、T1を聴くことによって、
2405がコントラストをつけて輪郭を際立たせて聴かせてくれることがわかるし、
それが巧みなだけにレコードの世界のおもしろさを錯覚させてもらっている、と述べられ、
あえて2405のほうをとらえている。
この記事は、トゥイーターの記事としてもおもしろかったが、
いまは瀬川先生の音の聴き方について知るうえで興味深い記事といえる。