ワイドレンジ考(その69)
UREIの813BxとタンノイのFSMは、見た目、よく似ている。
どちらもユニット構成は15インチの同軸型で、同口径のサブウーファーを追加した3ウェイということ。
同軸型ユニットの横に、どちらもレベルコントロール用のパネルがあり、
エンクロージュアの寸法も、813BxがW711×H908×D533mm、FSMがW716×H1112×D541mmで、
FSMが少し背が高いくらいで、しかもどちらも袴(台輪)つき。
重量も813Bxは85kg、FSMは83kg。
だからといって後に出たタンノイのFSMが813Bxを真似たわけでもなく、
たまたま偶然似た仕様になっただけのことだろう。
FSMは、1990年ごろ、MKIIに改良されている。
けれど813BxもFSMも、あまり注目はされていなかった印象がある。
私自身、同軸型ユニットを中心とした4ウェイ構成を頭のなかでは思い描きながらも、
3ウェイとはいえ、同軸型ユニットをベースとした、これらのスピーカーシステムにあまり関心をもてなかった。
トゥイーターがなくて、3ウェイだったから──、そんな単純な理由からではない。
結局、聴き手のこちらの心をとらえる音が、そこから得られなかったからだ。
優れた同軸型ユニットの存在がなければ、同軸型ユニットを中心にしたシステムは、当然だが成り立たない。
その同軸型ユニットは、他のウーファーやトゥイーターにくらべて、構造が複雑化するためもあって、
このころは種類もごく限られていた。
1980年代に新たに登場した同軸型ユニットとなると、ガウスのものしか思い浮ばない。
いつしか私の中で、同軸型ユニットを中心とした4ウェイ構成は薄れていってしまった。