井上卓也氏のこと(その2)
井上卓也の名前を強烈に感じたのは、
1977年にステレオサウンドの別冊として刊行されていた「コンポーネントステレオの世界 ’78」と
1979年刊行の「世界のオーディオ」シリーズのタンノイ号である。
「世界のオーディオ」のタンノイ号で強烈だったのは、タンノイを生かす組合せは何か、という記事だ。
ここで井上先生は、タンノイのバークレイ、アーデン、ウィンザー、バッキンガムの他に、
GRFとAutograph(オートグラフ)の組合せをつくられている。
驚くのは、オートグラフの組合せで、高能率の、
このスピーカーにあえてハイパワーアンプのマッキントッシュのMC2300を組み合わせて鳴らされている。
しかもコントロールアンプは、マッキントッシュと対極にあると、当時思っていたマークレビンソンのLNP2である。
79年といえば、まだ16歳だった私のオーディオの思い込み、常識を、軽く破壊してくれた組合せである。
本文を読んでいただくとわかるが、MC2300のパワーメーターが、ときどき0dBまで振れていた、とある。
つまり300Wのパワーが、オートグラフに送りこまれていたわけだ。
それでジャズだ。
菅野先生録音の「サイド・バイ・サイド」を鳴らされている。
山崎ハコの「綱渡り」も聴かれている。
この人は、何かが違う、この記事を読みながら、そう感じていた。