FRANCO SERBLIN Ktêma(その2)
ソナス・ファベールは、1988年、Electa Amatorで日本に初めて輸入された。
Electa Amatorを初めてみた時は、期待した。
いい音がしそう、である。
多くのオーディオマニアが、Electa Amatorに初めて接した時は、そう思うだろう。
出てきた音は、期待に反した音だった。
悪い音だったから、期待に反したわけではなく、
乾いた音だったからだ。
この「乾いた音」も、決して悪い意味ではない。
いい意味での乾いた音なのだが、私が勝手に期待していたのは、
もう少し潤いのある表情だったからだ。
そんな出合いだったものだから、その後のソナス・ファベールの新作を聴く機会があっても、
心底、いい音だなぁ、と思うことは訪れなかった。
とはいえ、そんなふうに感じていたのは、少数だったのかもしれない。
ソナス・ファベールの評価は高いままだった。
別項で書いているが、私が心底いい音だなぁ、と感じたソナス・ファベールのスピーカーは、
CremonaとCremona auditorだった。
インターナショナルオーディオショウで、ノアのブースで、
VTLのアンプに接がれていたCremonaは、本当にいい音だったし、
私が勝手に求めていた潤いが、その音にはあった。
ソナス・ファベールのスピーカーで良かったのは? と訊かれれば、
Cremonaだ、といまでもそう答える。
例えばStradivari Homage。
立派な音とは私だって思うけれど、
その音はCremonaの延長線上にあるとは感じられなかった。
そんな私は、フランコ・セルブリンのKtêmaを、
まずは真空管アンプで鳴らしたい。