オリジナルとは(その12)
まだステレオサウンドにいたとき、
あるときから井上先生からいわれたことがある。
メーカー、輸入商社から製品を借りるときに、必ず付属ケーブルの有無を確認して、
ラインケーブル、もしくはスピーカーケーブルが付属して製品として市場に出ているのであれば、
そのケーブルもいっしょに借りておくように、と。
正直、そのときも、ステレオサウンドにいたときも、井上先生の真意が理解できていたわけではなかった。
でも、いまはなぜ、そのようなことを言われたのか、
それぞれのオーディオ機器の領域について考えてみれば、よくわかる。
だからマランツのCD34の、リアパネルから出力ケーブルが直出しになっているのを指して、
そのことを高く評価されていた。
ケーブルを交換するのが好きな人にとっては、リアパネルに出力用のRCAジャックがついていなくて、
ケーブルが直出しになっている製品は、改造しないかぎり、ケーブルの交換はできないので、
そのこと自体がマイナス点として受けとめる人もいよう。
実は、当時、私も、ケーブルの交換できないのが残念とまでは思わなかったものの、
コスト的にはそれほど変らないはずなのに、なぜ出力ケーブルを直出しにしたのか、と疑問に思ったものだ。
それにケーブルが自由に選択できれば、もっとCD34の評価は高くなるだろうに、とも。
井上先生は、CD34は、ここまで(出力ケーブルの先まで)、いわば音を保証している、という旨のことをいわれた。
ジェームズ・ボンジョルノがAmpzilla2000で復活したとき、
日本のオーディオマニアの中には、Ampzilla2000は電源ケーブルが交換できないから、つまらない、
交換できれば、もっといい音にできるだろうに、といった声をネットに書き込んでいるのをいくつか見かけた。
けれど、私は、Ampzilla2000が電源ケーブルを着脱式にしなかったのは、ボンジョルノの良心だと思っている。