アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その7)
今年のOTOTENで、DSオーディオのES001を聴くことができた。
DSオーディオいうところの偏心検出スタビライザーなのだから、
その音を聴くという表現は、少し間違っているのかもしれないが、
その効果を聴いた、という表現も少し違うように感じてもいる。
DSオーディオのブースに入ったときに、
ちょうどタイミングよくES001のデモが始まろうとしていた。
ES001が出ていたのは知っていた。
ただどんな製品なのかを正確には知ろうとはせずに、
レコードの偏心の問題を自動的に解決してくれるモノだと勘違いしていた。
DSオーディオのスタッフの話は面白かった。
ナカミチのDragon-CTの話も出てきた。
私よりも二まわりほど若い方のようで、TX1000の話はなかった。
アナログディスク再生において、ディスクの偏心は音に大きく影響する。
そのことはずっと以前から云われてきたことだし、
だからこそナカミチが、いまから四十年以上前にTX1000を開発しているし、
高価すぎるTX1000の普及モデルとしてDragon-CTも出してきた。
私はどちらもステレオサウンドの試聴室で、その効果を聴いている。
偏心しているレコードの芯出しを行うと、誰の耳にもあきらかなほどの音の違いが生じる。
ナカミチのアナログプレーヤーは、どちらの機種も偏心を検出し、
芯出しまでボタン一つで行ってくれた。
その印象が残っていたために、
ES001も検出・芯出しまで行ってくれるモノだと思い込んでしまった。
思い込みながらも、実際にはどんな方法で行うのだろうか、とあれこれ想像はしていた。
検出はなんとなくこんな方法だろうと想像はついたけれど、
芯出しの機構をスタビライザーのなかで、どう実現するのか。
なかなか大変なことなのに──、
と思っていたわけだが、ES001の説明を聞くと、
ユーザー(人間)が芯出しを行う。当然といえば当然か。