ハイエンドオーディオ考(その4)
五味先生は、
《プロ用高級機をやたらに家庭に持ち込む音キチは、私も含めて、宴会料理だけがうまいと思いたがる、しょせんは田舎者であると、ヨーロッパを旅行して、しみじみさとったことがあった》
と書かれている。
この文章が載っている「五味オーディオ教室」から始まった私のオーディオなのだが、
私自身、プロ用機器を喜んで使っていた。
EMTのアナログプレーヤーに憧れていたのだから、
930stのトーレンス・ヴァージョンの101 Limitedが登場したときは、
後先考えずに「買う」と言ってしまった。
そして930stの上級機である927Dstも手にいれた。
つまり《しょせんは田舎者》であったわけだ。
五味先生も930stを使われていたし、スチューダーのC37も手に入れられている。
927DstやC37は家庭用としては大きすぎる機器でもある。
それでもいいわけめくが、まだ家庭に持ち込めるぎりぎりのサイズではあったと思う。
いまのハイエンドオーディオ機器の一部の機器のように、
これらのスピーカーやアンプ、アナログプレーヤーは、
いったいどれだけの広さの部屋を要求するのだろうか──、
そういいたくなるほど大きすぎるし、重すぎるモノが登場してきている。
これらのオーディオ機器の音は聴いていないし、
聴いたからといって、その音について否定的なことを書きたいわけではなく、
これらのオーディオ機器をポンと買えて、苦もなく設置できる環境に住んでいる人は、
料亭の宴会に出す料理を家庭で食べたいと思っている人なのだろうか。
どれぐらい前のことだろうか、
ある記事で、一億円を超えるマンションは即金で買うものだ、とあった。
会社員で高給取りで、住宅ローンを組めば一億ほどマンションは買えるであろう人がいても、
良心的な業者はすすめない、ともあった。
十年先、二十年先はどうなっているのか、誰にもわからないのだから理由だった。
いまのハイエンドオーディオ機器も同じように思える。
長期の分割払いで買うモノなのか。
即金で買える人が買うモノのように思えるし、
そういう人は、毎日家庭で、料亭の宴会に出す料理を食べたいのだろうか。