オーディオ機器を選ぶということ(再会という選択・その6)
20代のころ、GASのTHAEDRAを使っていた。
1980年代後半である。
THAEDRAが登場して、ほぼ十年経ったころの話だ。
なので、そのころTHAEDRAを使っていた人も少なくなかったし、
THAEDRAを使っている、と周りのオーディオマニアにいったとしよう。
その時、「いまさらTHAEDRAねぇ……」という人はいなかった、といってよいだろう。
それから三十年以上が経ち、
「THAEDRAをヤフオク!で落札した」と不用意にいおうものなら、
「いまさらTHAEDRAねぇ……」と返してくる人はいる──、と思う。
たとえば、これがTHAEDRAではなく、マランツのModel 7だったらどうだろうか。
「いまさらModel 7ねぇ……」という人はいるだろうか。
おそらくいるだろうけれど、
「いまさらTHAEDRAねぇ……」という人よりもずっと少ないように思う。
MODEL 7はTHAEDRAより、ずっと以前に登場している。
なのに「いまさらModel 7ねぇ……」という人はずっと少ない。
理由はいくつか考えられる。
そのうちの一つは、資産価値ということがあるように感じられる。
いまマランツのModel 7の中古相場は高騰している。
百万円を超える場合も珍しくなくなってきている。
三百万近い値がつけられていたケースもある。
私がオーディオに興味をもったころ、1976年ごろは三十万円ほどだった。
そのころ登場したTHAEDRAの定価は六十六万円だった。
それから四十年以上が経ち、Model 7の相場は高くなる一方で、
THAEDRAの相場は低くなってきている。
低くなってきたからこそ、今回私は三万円ほどで手にすることができたわけなのだが。