二つの記事にみるオーディオ評論家の変遷(その3)
1990年に、BBCモニターのLS5/1を、
オーディオ雑誌の売買欄で見つけて購入した。
いまならばヤフオク!があり、カラー写真で状態をチェックできるが、
あの時代は、オーディオ雑誌の巻末にある文章のみが情報だった。
だいたい程度良好とか新品同様とあった。
私が買ったLS5/1も程度良好と書いてあった。
それを信じるしかない。
近場の人なら訪ねていって確認することもできるが、確か関西の人だった。
届いたLS5/1はかなりくたびれたモノだった。
これを程度良好というのか、と文句の一つでもいいたくなるほどだった。
しかも売買欄にはKEFのLS5/1Aとあったが、実際はLS5/1だった。
それでも音を聴いてみると、定位のよさはまず驚いた。
LS5/1Aの定位のよさについては、
ステレオサウンド 38号で井上先生が書かれていた。
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このシステムは比較的近い距離で聴くと、驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感が得られる特徴があり、このシステムを選択したこと自体が、瀬川氏のオーディオのありかたを示すものと考えられる。
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LS5/1を聴いたのも、かなりの近い距離だった。
《驚くほどのステレオフォニックな空間とシャープな定位感》は、まさにそのとおりだった。
LS5/1を小改良したのがKEFのLS5/1Aであり、
LS5/1AがKEFの最初のモデルでもある。
つまりKEFのスピーカーシステムは、最初のモデルからシャープな定位感を特徴としていた。
LS5/1とModel 105を、同時比較試聴したことはない。
それでも印象のうえでの比較ならば、定位の精度感はModel 105が上といえる。
中高域のユニットを、ウーファーとは独立したエンクロージュアにおさめ、
しかもユニットの位置合せとともに、仰角と水平を調整できるようにしたスタイルは、
Model 107で完結している。
Model 107、それから105もSeries IIからは仰角調整はできなくなっている。
そのKEFがModel 107のあとに同軸型ユニットUni-Qを発表しているのだ。