オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(あるオーディオ評論家のこと・その6)
ここまで書いてきて、五年前に別項に書いたことを思い出す。
菅野先生が、ステレオサウンド別冊「JBLモニター研究」で、次のように書かれている。
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そしてその後、中高域にホーンドライバーを持つ4ウェイという大がかりなシステムでありながら、JBL4343というスピーカーシステムが、プロのモニターシステムとしてではなく、日本のコンシューマー市場で空前のベストセラーとなった現象は、わが国の20世紀後半のオーディオ文化を分析する、歴史的、文化的、そして商業的に重要な材料だと思っている。ここでは本論から外れるから詳しくは触れないが、この問題を多面的に正確に把握することは、現在から近未来にかけてのオーディオ界の分析と展望に大いに役立つはずである。
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1998年に書かれている。
4343に憧れてきたひとりとしても、そのとおりだと思う。
けれど残念なことに、いまのステレオサウンドの筆者の誰か一人でもいいから、
4343という材料(問題)を、多面的に正確に把握できる人はいるだろうか。
こういうことを書くと、柳沢功力氏がいるではないか、という人が出てくる。
私は柳沢功力氏には無理だ、と思う。
では、誰がいるか。
誰もいないのが、ステレオサウンドの現状だ。
傅 信幸氏も無理である。
傅 信幸氏よりも和田博巳氏のほうが年上だが、和田博巳氏はもっと無理である。
三浦孝仁氏は、
ずっと以前の記事「名作4343を現代に甦らせる」の試聴記を引き受けていることから、
絶対に無理。
別項で、月刊ステレオサウンドを出すべき、と書いている理由の一つが、
このことに関係してくる。
すべての筆者に、4343という材料(問題)をテーマに、
まとまった量の文章を書かせればいい、と思うからだ。