Date: 4月 1st, 2020
Cate: 五味康祐
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ケンプだったのかバックハウスだったのか(40年目の4月1日)

ステレオサウンド 55号の原田勲氏の編集後記には、こうある。
     *
 オーディオの〝美〟について多くの愛好家に示唆を与えつづけられた先生が、最後にお聴きになったレコードは、ケンプの弾くベートーヴェンの一一一番だった。
     *
テクニクスのアナログプレーヤーSL10とカシーバーSA-C02、
それにAKGのヘッドフォンを病室に持ち込まれていた。

これに近いシステムで、今日(40年目の4月1日)に、
ケンプの弾くベートーヴェンの作品一一一を聴いた。

iPHone、メリディアンの218、スタックスのヘッドフォンというシステムである。
五味先生はLPだったが、私はMQAで聴いた。

原田勲氏の編集後記には、こうも記してあった。
     *
先生は、AKGのヘッドフォンで聴かれ、〝ほう、テクニクスもこんなものを作れるようになったんかいな〟とほほ笑まれた。
     *
《ほう、テクニクスもこんなものを作れるようになったんかいな》には、
いい時代になったなぁ、という感慨もあったのではないだろうか。

いい時代になったなぁ、と私はしみじみ感じていた。
私が、今日聴いたシステムも、病室に持ち込める規模だ。
それでいて、どこにも薄っぺらさのない音で、ケンプのベートーヴェンを聴かせてくれる。

ケンプというピアニストの奏でる音と、MQAの本質的なよさは、
互いにソッポを向きあうわけではない。
むしろ、同じ方向の音と響きのようにも感じるから、
よけいにケンプのベートーヴェンが美しくきこえてくる。

いい時代になったものだ。

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