ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集(その5)
児玉麻里とケント・ナガノのベートーヴェンのピアノ協奏曲集(SACD)を、
やっと聴いたのは2月の終りのころだった。
ディスクを購入して約二ヵ月。封も切らずそのままにしていた。
よくCDボックスを買って、そのままにしている──、
そんな話を、特にクラシック好きの人ならば何度も目にしたり耳にしたりしていることだろう。
話を聞いたり見たりしているだけでなく、
自身もそうであったりする場合もあるはずだ。
クラシックのCDボックスは、いろんなレコード会社から出る。
10枚組程度ではなく、
50枚をこえるボックスも珍しくないし、しかも価格も棘ほど安かったりするから、
つい購入してしまう。
しかもHMVもタワーレコードもまとめ買いだと、さらに安くなることがある。
なのでCDボックスを、あれもこれもと注文すること(したこと)は、
クラシック好きの人ならば、一度や二度ではないはずだ。
大量の枚数のディスクが到着する。
嬉しい反面、それほどの枚数のCDをすべて聴く時間をつくるのは、なかなか大変である。
それで封を切らずに、そのままになってしまっているCDボックスの数が、
二桁になってしまった人もいる。
児玉麻里とケント・ナガノのベートーヴェンは、そういう理由ではない。
SACDというのが理由である。
SACDで児玉麻里とケント・ナガノのベートーヴェンのピアノ協奏曲集を聴いて、
みじめな音しか鳴らなかったら、
そしてそれ以上に、まさにベートーヴェンという音とは対極の音でしか鳴らなかったら……、
そういう怖れみたいなものがあったからだ。