MQAのこと、音の量感のこと(その8)
MQAは時間軸の精度の高さを謳っている。
けれど、時間軸の精度の高さということでは、
これまでは精度が高くなればなるほど、みずみずしい音は失われつつあった──、
個人的にはそう感じている。
ベルトドライヴ、アイドラードライヴからダイレクトドライヴ型プレーヤーが主流になり、
さらに回転精度を高めるためにサーボ回路が搭載され、
より高精度にするためにクォーツロックも採用されたわけだが、
それらすべてのプレーヤーがそうだった、とまではいわないものの、
大きな傾向として、やはりずみずしい音は失われていった。
CDが登場し、回転精度は水晶の精度となるわけだから、
アナログプレーヤーにつきもののワウ・フラッターは測定限界値以下となった。
そしてみずみずしい音は、さらに失われていった。
回転精度が高くなるということは、
時間軸の精度が高くなる、ということである。
つまり時間軸の精度をあげていくだけでは、みずみずしい音は得られないのかもしれない。
なのにMQAの音を聴いていると、
アナログディスク再生の理想形といいたくなるほどである。
ここでのアナログディスク再生におけるプレーヤーとは、
EMTの930st、927Dst、トーレンスのアナログ全盛時代のベルトドライヴ型、
他にもいくつか挙げられるが、いずれもダイレクトドライヴ型ではない。
これらのプレーヤーのワフ・フラッターは、
ダイレクトドライヴ型の普及クラスのモノよりも、カタログスペック上は悪かったりする。
それでも、音を聴けば、そんなスペック的なことは逆転する。
安定感のある音を聴かせてくれるのは、
総じてカタログスペックで低い値のプレーヤーであった。
つまり、カタログスペック上の回転精度、
静特性としての回転精度の高さは、音楽再生においてはほとんど意味をもたない。