トーンコントロール(その8)
トーンコントロールで昂奮する日が来るとは、まったく予想していなかった。
たとえばCelloのAudio Paletteの登場は、昂奮もしたし、
実際にAudio Paletteを見て触れて、さらに中身を見て、すこし醒めたところもあった。
それでもAudio Paletteでの昂奮は、
Audio Paletteというオーディオ機器への昂奮の方が、私の場合、大きかった。
Audio Paletteの六つのツマミを触れてみればすぐにわかることだが、
マーク・レヴィンソンが自慢するほど精度の高い造りではなかった。
それでもツマミをまわしていけば、おもしろいように音は変化していく。
使いこなせれば、おもしろそうだな、と思っても、
Audio Paletteをリスニングポイントから手が届く位置に置いて、
レコード(ディスク)ごとに六つのツマミをいじっていく、という聴き方は、
私は、あまりしたくない、と思う方だ。
ステレオサウンドの試聴室で、目の前にAudio Paletteを置いて、という使い方では、
おもしろいと思うし、オーディオマニア心が触発されるのは否定しない。
でも、ステレオサウンドの試聴室での聴き方と、
自分の、小さいとはいえリスニングルームでの聴き方は、決して同じではない。
メリディアンの218のトーンコントロールは、
218本体には、ツマミ、ボタン類はまったくついていないから、
必然的にiPhoneもしくはiPadで操作することになる。
218は、その外観からわかるようにバックヤードでの使用を前提としている。
218は目の前に置く必要はまったくない。
iPhoneが手元にあればいい。
そのうえで、トーンコントロールの効き方が、
何度でもくり返し伝えたくなるほど、心地よいのだ。
Audio Paletteがアプリケーションになっているのは知っている。
ダニエル・ヘルツからMaster Classという名称で、数年前から出ている。
macOS用である。
これがiPhoneから操作できるようになれば、
そしてアプリケーションのユーザーインターフェースが、
Audio Paletteをどこか思わせるようになってくれれば……、
そんなことを思ってしまうが、どうなのだろうか。