Date: 7月 14th, 2019
Cate: きく
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カセットテープとラジカセ、その音と聴き方(余談・その6)

井上先生が、ステレオサウンド 73号のベストバイにおいて、
カセットデッキの現状について、こんなことを書かれている。
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 カセットデッキの高性能化、機能の多様化は、すでに完成期を迎え、オーディオ製品というよりは、プログラムソースのベースとしての必需品的な性格が強くなり、ステレオサウンド的オーディオとは関係のない商品へと進んでいる様子である。
 価格的にも、すでに10万円前半が高級機の上限的な傾向が定着し、カセットテープの高性能化によるクォリティアップという好材料もあって、最下限の音質が向上したため、一段とオートリバース、Wカセットへの方向が促進されるだろう。
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73号は1984年冬号である。
ナカミチの1000ZXLは、この時点でも現行製品だったが、
カセットデッキのベストバイではなくなっている。
二十万円以上のカセットデッキのベストバイとして、
B&OのBeocord 9000には岡先生が二点をいれられているが、
これのみ、岡先生だけである。

1000ZXLが登場したころとは、ずいぶんな様変りである。
こういうふうになることは、メーカーならばある程度は予測できたことなのか──、
とも思う。

予測していたメーカー、そうでないメーカー、どちらもあったと思う。
井上先生は、77号のベストバイでは、
《あれほどまでに、全盛を誇っていたカセットデッキが、急激に衰退を示したことは、日の出の勢いを謳歌するCDプレーヤーにとっても、何れは己れの身かな、という一種の警鐘であるのかもしれない》
と書かれている。

77号は1985年、三十四年前のステレオサウンドである。

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