ハイ・フィデリティ再考(ふたつの絵から考える・その7)
十数年前くらいからだろうか、
スピーカーシステムの音の精度、精確さは確実に向上してきている。
インターナショナルオーディオショウで聴くだけなのだが、
それでもYGアコースティクスののスピーカーシステムの音には、
ここ数年、感心するばかりだ。
B&Wのスピーカーシステムもそうだ、といえよう。
あくまでも聴いた範囲であって、
他にも精度の高さ、精確さをほこるスピーカーシステムはあるだろう。
とはいっても、一般には精度の高い音と高く評価されていても、
聴いてみると、この音のどこが? と思うスピーカーもないわけではない。
どこのメーカーなのかは書かないけれど、一社ではない。
インターナショナルオーディオショウ、オーディオ店で鳴っている音での印象であって、
愛情をもって鳴らしているユーザーの音を聴いての印象ではない。
でも二十年くらい前か、
知人があるメーカーのスピーカーシステムを購入した。
そのメーカーの音を、それまで一度もいいと思ったことがなかった。
ひどい音だ、と聴く度に思っていた。
なのにハイエンドユーザーのあいだでの世評は高かった。
そのスピーカーを知人が買ったわけだ。
聴きに来ませんか、という誘いがあった。
期待はしていなかったけれど、やっぱりひどかった。
知人もそう感じていたようで、すぐに売っぱらってしまった。
愛情をもって鳴らしてこそ──、というけれど、
それはあくまでもまともなスピーカーに関してであって、
そのスピーカーのように欠陥スピーカーといいたくなる場合は、例外というしかない。
どこかが間違っているとしかいいようのない音のスピーカーは、確かに存在する。
そういうスピーカーまでも、精度の高い音といわれているのをみていると、
精度の高い音、精確な音とはいったいなんだろう、と、
次元の低いところで考えなくてはならないのかと思ったりもするが、
そんなスピーカーをきちんと聴き分けて除いていけば、
確かにスピーカーの音の精度、精確さは確実に向上している。