Western Electric 300-B(その4)
300Bのアンプで、シングルかプッシュプルか。
フィラメントの点火という点も、プッシュプルを選択する理由のひとつだ。
300Bのシングルアンプだと、どうしても直流点火が必要となる。
そんなの簡単ではないか、と考える人もいるだろうが、
以前書いているように、直流点火にはいくつかの方法があり、
比較的簡単に直流点火が可能なのは、三端子レギュレーターによる定電圧点火である。
ハムもすんなりなくなる。
けれど三端子レギュレーターによる定電圧点火は、すすめられない(やりたくない)。
音がいい、とは思えないからだ。
以前書いていることなので詳細は省くが、
定電圧点火ではなく定電流点火すべきであり、
三端子レギュレーターによる定電流点火も可能だが、これもすすめられない。
定電流点火をきちんとやろうとするならば、
ラジオ技術に石塚峻氏が発表された回路こそがすすめられる。
とはいえ定電流回路は、意外に難しい。
ここでは詳しくは述べないが、実際に定電流点火を試みようと、
あれこれ考えてみると、大変さは作らなくても実感できる。
それに出力管の300Bを定電流点火するならば、前段の真空管も定電流点火したくなる。
そうなるとさらに大変なことになる。
ならばいっそのこと交流点火でいけるプッシュプルでいいではないか、と思う。
けれど、ここで考えるのは、300Bはアメリカの真空管である、ということだ。
アメリカの電源周波数は60Hzである。
東京は50Hzである。
別項「日本のオーディオ、これまで(ラックスのアンプ)」で指摘したように、
アメリカのアンプは60Hzで聴いてこそだ、と思っている。
同じ理由で、300Bも交流点火ならば、60Hzで聴いてこそなのだろう、と思うわけだ。