「新しいオーディオ評論」(その16)
ステレオサウンドにいたころ、オーディオ業界関係者、
それから訳知り顔のオーディオマニアからよくいわれていたことがある。
「ステレオサウンドは、あれだけ広告が入っているから、一冊も売れなくても黒字なんでしょ」と。
いまでも数年に一度くらい、同じことを聞くことがある。
こんなことをいってくる人は、楽な商売していますね──、
そんなことをいいたいようだった。
巻末の広告索引のページをみれば、どれだけの広告が載っているのかわかる。
十年前、二十年前のステレオサウンドと比較してみると、
広告量のどんなふうに変化していったのかもすぐにわかる。
確かに減っている。
それでも他のオーディオ雑誌の広告索引と見較べると、
ステレオサウンドはダントツに多いのはひと目でわかる。
本が売れなくても、広告だけで黒字。
広告料がどのくらいなのかは調べればすぐにわかるから計算してみれば、
一号あたりの広告収入のおおよその目安はつく。
でも、そんなことを計算したところで、実際のところ、
本が一冊も売れなかったら、広告は入らなくなる。
ある程度の部数売れているから広告も入るのである。
こんな当り前のことをいまさらながら書いているのは、
雑誌にとって、ある一定以上の読者数は絶対的に必要である。
いま書店には冬号が並んでいる。
冬号とは、つまりステレオサウンドグランプリとベストバイの特集号であり、
賞の特集号である。
この冬号だけ特別定価でいつもより高い。
冬号は売れる。
売れるけれど、冬号だけは買わない、という読者が昔はいた。
いまはどうなのだろうか。