日本のオーディオ、これまで(上原晋氏のこと・その4)
ステレオサウンド 55号から、菅野先生によるタンノイ研究が始まった。
一回目は、やはりオートグラフである。
二回目が、SRMとCLMの比較であり、
四回目(58号掲載)で、SRMシリーズを全機種試聴というものである。
SRMシリーズには、オリジナルとなるSuper Red Monitor(SRM)、
これをやや小型化したSRM15X、
12インチ口径同軸搭載のSRM12XとSRM12B、
10インチ口径のSRM10Bの五機種があった。
つまりABCシリーズのArden、Berkeley、Cheviot、Devon、Eatonのラインナップが、
そのままSRMシリーズでも展開されていた。
SRMシリーズは、大掴みに言えばABCシリーズのエンクロージュアを強固にしたものだ。
SMM12Xは、だからABCシリーズのCheviotに相当するモデルともいえる。
CheviotとSRM12Xの外形寸法はほぼ同じだが、重量はCheviotが25kg、SRM12Xが30kgである。
SRM12Xだけでなく、SRMシリーズは、ABCシリーズの相当モデルよりも重量は増えている。
私はSRMシリーズはほとんどが聴いていない。
かろうじてSRMを、わすかな時間聴いたことがあるだけだ。
参考までに、ステレオサウンド 58号での菅野先生の評価を引用しておく。
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SRM12Xは、ユニット口径が12インチの同軸型で、3149と称されるユニットが内蔵されている。トゥイーターとのクロスオーバーも、15インチユニットとは異なり、1・4kHzにとられている。最大連続入力100W、ピークなら350Wというヘヴィデューティな設計で、92dB/W/mの音圧レベルだから、相当な能力をもっているといえるだろう。一連の音質調整をこのシリーズはすべて備えていることはいうまでもない。つまり、ロールオフ4段、ハイエナジー5段でコントロールが可能。エンクロージュアはバスレフ型で、パイプダクトが下部に一本ある。たいへんバランスのよいシステムで今回の試聴機種の中では最も強く印象づけられた製品であると同時に、SRMシリーズの中にあって、堂々と存在の独自性を誇り得る機種でもあると思う。12インチ口径のユニット3149の音質はたいへん優れていて、全帯域のバランスとしては、むしろ15インチ口径のK3808や、K3838、3828よりよいと思われる。ごく低い領域は15インチ口径が勝ることは当然だが、しかしエンクロージュアを小型化した場合には、絶対、12インチ口径の低音のほうが質がよいはずだ。
(中略)
SRM12Xは、SRMシリーズの中で最も一般向きとして受け入れられる製品だと思う。30cmのデュアルコンセントリックのバランスはたいへん好ましく、音の質感はタンノイの重厚さを保ちながら、シリーズ中、もっともカラーレイションの少ないものといってよい。聴き応えのあるタンノイ特有の説得力は強いが、中低行きがよくコントロールされているので、固有の癖と感じられる音ではない。スケール感は十分で,15インチユニットの大型フロアータイプとまではいかなくても、一般家庭の20畳ぐらいまでの部屋なら不足はないはずだ。
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いまこうやって菅野先生のSRM12Xの評価を読み返していると、
上原晋氏らしい選択とおもえてくる。