日本のオーディオ、これまで(上原晋氏のこと・その2)
アルティメイトシリーズは1983年に発売になった。
ラックス最後の真空管アンプということだけでなく、限定販売でもあった。
けれど翌1984年には、
ウェスターン・エレクトリックの300Bを採用したシングルアンプMB300を出す。
その後も、ラックスは真空管アンプを出しつづけているし、
現在も真空管アンプはラインナップのなかに、いつもある。
アルティメイトシリーズは、すぐに完売した、ともきいている。
限定ということも売行きを加速したのかもしれないが、
真空管アンプは、まだまだ商売になる、とラックスは思ったのだろうか。
このことについて、あれこれ書くつもりはない。
アルティメイトシリーズは、ラックスにとって特別な製品であったのだろう、
カタログの他に、冊子もつくっている。
ラックスの製品で、こういうことはあったのかどうか知らないが、
他のメーカーをながめてみても、あまり例がないことだろう。
冊子がつくられることは、ままある。
けれど、それらの冊子は、
各オーディオ雑誌に製品が取り上げられた記事をまとめたものである。
アルティメイトシリーズの冊子のような例は、少なくとも私には他に知らない。
この冊子をみたことがある人ならば、
そこに上原晋氏のリスニングルームが載っていることを記憶されていることだろう。
タンノイのGRFメモリーが置かれてあった。
このタンノイを、アルティメイトシリーズのアンプで鳴らす、という記事である。
この記事のせいだろうか、
上原晋氏は、GRFメモリーを鳴らされていた、と思われた人は少なくないはず。
けれど、実際はタンノイのSRM12Xを鳴らされていた。
冊子の記事をよく読み、よく写真をみれば、なんとなくわかることなのだが、
GRFメモリーは、冊子のために一時的に上原晋氏のリスニングルームに持ち込まれたものだ。