表紙というデザイン(その3)
Record’s Bibleは売れたのだろうか、1978年に二冊目が出ている。
やはり表紙デザイン=田中一光、表紙撮影=安齊吉三郎である。
1977年のRecord’s Bibleは、表紙の背景は黒だった。
1978年のRecord’s Bibleは、背景は明るいグレーになっているが、
基本的なところは同じで、ナグラのSNを中心として、まわりにアクセサリーが配置されている。
1977年のRecord’s Bibleのように、
表4のビクターの広告まで含めてのデザインではなくなっているが、
私は1978年のRecord’s Bibleのデザインに魅力を感じる。
「コンポーネントステレオのすすめ」の表紙のデザイナーの塚本健弼氏は、
田中一光氏の元でデザインの修業をされていた。
いわば師弟関係である。
Record’s Bibleの表紙は、塚本健弼氏の表紙デザインを見た田中一光氏の、
私ならこうやる、という対抗心のようなものがあったのではないか……、
と勝手におもっている。
塚本健弼氏の手法は、それぞれのオーディオ機器を正面から撮影し、
それらの切り抜き写真をレイアウトしていく、というもので、
それぞれのオーディオ機器の写真の縮小率は、同じなわけではない。
スピーカーのような大きなモノの縮小率はやや大きめで、
カートリッジのような小物の縮小率は小さめである。
田中一光氏の手法は、すべてを並べての一発撮りゆえに、
縮小率を個々でコントロールすることはできない。
1977年のRecord’s Bibleでは背景が黒だから、
そこにモノを置いた際の影がはっきりとはしない。
ほとんどわからない、といってもいい。
1978年のRecord’s Bibleでは明るいグレーが背景だから、
そこに影ができ、1977年のRecord’s Bibleより立体的に見える。
塚本健弼氏の手法も切り抜き写真だから、影はない。