Date: 10月 15th, 2017
Cate: 107, KEF
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KEFがやって来た(その22)

KEFのModel 107に関しては、少し違った方向からの考察もできなくはない。

ステレオサウンドの1975年別冊「コンポーネントの世界」、
巻頭に掲載されている鼎談(岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏)。
そこでの瀬川先生の発言。
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瀬川 これもKEFの社長の話なんですが、いまのスピーカーでは、聴きてが左右に動いたり、ちょっと立ち上ったりすると、定位とかパースペクティブが変わってしまうんだけど、なんとかもう少し聴取位置が自由にならないものか思索中だといってました。これは位相というのが解析の一つのヒントのようだ、ともいってましたね。
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この発言の二年後にModel 105は登場している。
KEFの社長レイモンド・クックは、この年、来日している。
そのときのインタヴューが、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」に載っている。
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──それではKEFの新型スピーカーシステムであるモデル105についておききしたいと思います。105は外観からはっきりわかる特長は、各ユニットの取付位置をずらせて、位相の配慮をしていることですね。これはリニアフェイズという呼び方でいいのでしょうか。
クック まず最初に申しあげておきたいことは、105はフェイズ・リニア・スピーカーではない、ということです。厳格にいいますと、実はリニアフェイズ・スピーカーというのは、技術的には不可能なことなのです。たとえば日本ではリニアフェイズとされて売られているスピーカーは、あるきまった領域でのみリニアフェイズだということなんです。大体、600〜6000Hzくらいの間なんですけど、帯域内すべてを完全にリニアフェイズにしているわけではありません。
──それでは105はどういう呼称をされているのですか。
クック KEFの105は、まだ正式な呼称は決めていないのですが、もし決めなければならないとしたら、コヒーレント・フェイズ・スピーカー(Coherent Phase Speaker)とすればいいだろうと思います。
──フェイズ・コヒーレントというのは、どういう意味ですか。
クック リニアフェイズというのはグラフで表わすと、水平の一本の線で表わしますが、フェイズ・コヒーレントは、低域から高域に行くに従って下がる、つまり傾斜していく。しかし、傾斜はしても帯域内は直線だということです。リニア・フェイズといわれるのは帯域内が一直線ではなくて、大体600Hz以下では上昇カーブを画き、6000Hz以上で下降カーブを画いています。私どもの研究では、フェイズ・リニアとフェイズ・コヒーレントのスピーカーを実際に聴きくらべてみたのですが、その判別は不可能でした。ということは、フェイズ・リニアにするために、いろんな制約を受けることよりも、もっと自由に、何も犠牲にしないで設計できる方法の方がよいと判断したわけです。
──将来コンポーネント・スピーカーはフェイズ・コヒーレントあるいはフェイズ・リニアになっていく必要がありますか。また、なっていくと思われますか。
クック なる必要があると思いますし、世界的にリニアフェイズを目指して行くでしょう。もちろん手法はいろいろわかれるとは思いますが、あまり安価なスピーカーはそこまでするかどうかはわかりませんね。KEFもフロアー型ではフェイズ・コヒーレント型以外のものをつくる意志はありません。
(中略)
──フェイズ・リニアを目標にしているスピーカーを聴く場合のチェックポイントはどんなところですか。
クック 大切なことは、軸上だけでなく、軸上からはずれたところでも聴いて、そのよしあしを判断すべきです。ですから、スピーカーの回りをグルッと回って聴くことも必要です。その場合、耳の高さもいろいろ変えてみるといっそうよくわかります。今度の105はその点非常によく出来ています。
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このインタヴューを読めば、聴取位置の自由度を広くしたスピーカーとして、
Model 105が開発されたとみてもいいだろう。

だが、けれども……、と思ってしまう面も、Model 105にはある。

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