世代とオーディオ(略称の違い・その2)
数ヵ月前、書店に手にしたオーディオ雑誌に、
「みんな、アニソンを聴いてきた」、
そんなふうなタイトルがつけられていた記事があった。
アニソンとはアニメソングの略である。
ここで書きたいのはアニソンという略称についてではなく、
「みんな、アニソンを聴いてきた」という見出しについて、である。
この記事は、いまおじさんと呼ばれている世代も、
子供のころはアニソンと呼ばれる音楽を聴いていた、というものだった(はずだ)。
確かに聴いていた。
いまではクラシックを聴いている時間がながい私も、
小学生のころからそうだったわけではない。
だから「みんな、アニソンを聴いてきた」という趣旨は、
そのとおりである、と同意しても、その世代の者はアニソンとは呼んでいなかった。
アニメだけを見ていたわけではなかった。
子供向けの番組には実写ものも多かった。
ウルトラマン・シリーズや仮面ライダー・シリーズなどもあった。
これら特撮ものと呼ばれるもの以外の実写ものもあった。
それらの主題歌をすべてアニソンと言い切ってしまうところに、
反撥したくなるし、なにかひと言いいたくなる。
そのころの子供は、アニソンなんて言葉はつかっていなかった。
アニメソングでもなかった。
テレビ主題歌といっていた。
「みんな、アニソンを聴いてきた」の編集者は、若い人なのだろう。
それはそれでもいいのだが、なぜ、周りの、そのころの世代の人たちに確認しないのか。
中には、私と同世代であっても「アニソン、聴いていた」と答える人もいようが、
「聴いていたけど、アニソンとはいわなかったな」と答える人も必ずいる。
ほんのちょっとした手間を省いて、記事をつくってしまっている。
どこか細部をなおざりにしたまま記事をつくっている、という印象を受ける。
自分たちの世代だけの考え・感性だけで、
「みんな、アニソンを聴いてきた」といわれても、
同世代に向けての記事でしかない。