セッティングとチューニングの境界(その6)
話を1月4日のことに戻そう。
ディスクを決めて、ボリュウムの位置もいっさいいじらず、
①の音から⑧の音まで聴いてもらった。
同じディスクでそのまま続けることも考えたが、
気分転換を兼ねて、セッティング、チューニングとは関係なく、
他のディスクを聴いてもらった。
そして常連のHさんが持参されたCD「能×現代音楽 Noh×Contemporary Music」をかける。
まず一曲目を聴いて、七曲目を聴いた。
七曲目を聴いてもらい、いま鳴っている音をどうしたいか、
不満はどこにあるのかを、Hさんにきいた。
こうしてほしい、という要望があった。
その点は、私も感じていたことであり、
それが録音によるものなのかがはっきりとしていなかった。
どこをいじる。
三つほどすぐに浮んだ。
三つすべてを一度にいじるのではなく、まず最初にどこにするのか。
これはほぼ直感的に決めた。
スピーカーのところに行き、わずかなところを変える。
時間はほとんど掛からない。左右のスピーカーに対して行っても、30秒程度のことである。
傍で見ていると、何をやっているのかはっきりとしない、
その程度のことを変えてみた。
これだけのことであっても、音の変化ははっきりと、大きかった。
不満と感じていたところがかなり解消された。
これにはHさんも、かなり驚かれた。
①から⑧までの音の変化を聴いてきて、さらに驚かれた。
同じ状況でどこをいじるのかは人によって違ってくる。
私は、ここだ、と感じたところをいじったわけだ。
それは直感であり、
これまでのセッティングとチューニングの経験とオーディオの想像力によって裏打ちされた直感である。