ステレオサウンドについて(その90)
ステレオサウンド 56号特集の山中先生の組合せで、気になるところがあった。
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これは最初の組合せのところでも触れたことだが、最近の高級アンプは、組合せるスピーカーシステムをより効果的に生かすようにドライブしてくれるという、広い対応性を備えてきている。この組合せで選んだビバリッジのRM1(+RM2)プリアンプとスモのザ・ゴールドというパワーアンプも、先のマーク・レビンソンとスレッショルドの組合せと似たような意味で、広い対応性をもったシステムだといえる。特にスモのザ・ゴールドというクラスAのパワーアンプは、使うスピーカーを選ばないという点で優れた能力をもっている製品である。しかも、アンプとしての性能の点でも、スレッショルドやマーク・レビンソンのパワーアンプに匹敵するどころか、むしろそれをしのぐとさえいえるクォリティの高さをもったパワーアンプである。
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いまでは、というか、The Goldを手にしてからは、まったくそのとおり、と思えたことも、
当時はまだ高校生で、憧れのパワーアンプはマークレビンソンのML2であり、
スレッショルドのSTASIS 1であった。
The GoldはSTASIS 1よりもML2よりも安いパワーアンプだった。
山中先生は具体的な型番を言われていないが、
マークレビンソンのパワーアンプはML2、スレッショルドはSTASIS 1のはずだ。
なぜ、このふたつのパワーアンプをThe Goldが凌ぐのか。
山中先生のいわれることを疑うわけではなかったけれど、
なにかの間違いではないか、と思い込もうとしていた。
実は55号の新製品紹介のページに、The Goldは登場していて、
そこでは井上先生が語られていることが気になっていた。
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井上 レコードの録音の差も明瞭にわかります。あるコントラストをつけて録ったもの、コンサートホール独特の雰囲気をもつものなどその通りに出してくれる。こういうアンプは言葉で表現しにくいですね。一定の姿形がありませんからあらゆるいい言葉がいえてしまう。以前紹介したスレッショルドのステイシス1とよく似た印象がありますが、このアンプはもっと反応が速いしより変化自在だと思います。
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この時もSTASIS 1の方がいいはずだ、と思い込もうとした。
つまり55号、56号と二号続けてThe Goldの優秀さを読まされたことになる。
いまではそれはほんとうだった、と実感しているわけだが、
そういう時期が私にはあった。