Date: 10月 20th, 2016
Cate: きく
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感覚の逸脱のブレーキ(その4)

別項「ステレオサウンドについて」で54号のことを書いている。
54号のスピーカー試聴で、瀬川先生はリファレンススピーカーを用意されている。
リファレンスアンプではなく、スピーカーの試聴にリファレンススピーカーを、である。

編集部による「スピーカーシステム最新45機種の試聴テストはこうしておこなわれた」に詳しい。
一部を引用しておく。
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 テスト方法で他の二氏と大きく異なるのは、リファレンス・スピーカーを使用したことだ。スピーカーはアンプと違いおそろしく多様な音があるので、たいへん色の濃い音を聴いた直後に、全くキャラクターの異なるスピーカーの音を聴くと、いかにオーディオ機器の音を聴き馴れた耳といえども、音を聴く上でのものさしが狂う恐れがあるので、自分の耳のものさしを整える意味でリファレンス・スピーカーを聴いてから、新しいスピーカーを聴くようにしている。
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瀬川先生がリファレンススピーカーとして使われたのは、
自身でも常用されているKEFのModel 105 SeriesIIとJBLの4343の二機種である。

このテスト方法については、菅野先生が巻頭座談会で語られている。
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菅野 50機種になんなんとするスピーカーを聴きましたけれど相変らず、一つとして同じ音のするスピーカーがなかった。瀬川さんは、ちょうど利き酒をする時に前に飲んだ酒の味を消すために口の中をすすぐ水の役目にリファレンススピーカーを使ったということですが、お聞きしてたいへんいい方法だと思いました。私はそういう方法をとりませんでしたけれど、たしかに前に聴いたスピーカーが、たとえほんの短い時間であっても、下敷きになってしまい、次のスピーカーを聴くときになにがしかの影響を受けるという傾向がどうしても出てくると思います。そうした問題がありながらもなぜリファレンスを使わなかったかというと、わが家において試聴するなら、私自身の装置をリファレンスとして使えますが、この部屋で自分のリファレンスとなるようなわが家と同じ音を出す自信がなかった。ステレオサウンドに常設されているJBL♯434も、自分にとってはリファレンスになり得ない部分があるので、そういう方法をとらなかったのです。
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直前に聴いた音が、その後に聴く音に影響を与えることは、
「五味オーディオ教室」にも書いてあった。

瀬川先生がとられた方法も、試聴風景の写真を見る限りはベストとはいえない。
試聴スピーカーの横というか、部屋の隅にリファレンススピーカーか置いたままになっているからだ。
できればあるスピーカーを聴き終ったら、
そのスピーカーのかわりに試聴室にリファレンススピーカーを運び込み音を聴く。
そしてまたリファレンススピーカーを試聴室から運びだして、次に聴くスピーカーの試聴。
またリファレンススピーカーを運び入れ……。

とはいえこれだけのことを45機種のスピーカーを聴くたびに行っていてはたいへんである。
それに54号で実際に聴いた数は50機種近くあり、結果の悪かったモノは除外されている。

ならばリファレンススピーカーのかわりにリファレンスヘッドフォンはどうだろうか。

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