ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その9)
平面スピーカーで知られるFAL(古山オーディオ)では、
ハイルドライバーのトゥイーターを扱っている。
そこにはスイス製のダイアフラム、とある。
FALオリジナルハイルドライバーとある。
ということはダイアフラムだけを輸入して、磁気回路、フレームをつくり、
ATMトゥイーターとして製品化しているのたろう。
どのメーカー製なのか、詳細はないが、もしかするとERGO製なのかもしれない。
ヘッドフォンに使われているダイアフラムを使っていたとしても、ふしぎではない。
ならば逆も可であるのだから──、と考える。
ハイルドライバー(Air Motion Transformer)のヘッドフォンではなく、
AKGのK1000のハイルドライバー版が実現できないのだろうか、と。
ステレオサウンド別冊「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」には、
ESSのヘッドフォンもMK1Sも登場している。
ハイルドライバーのヘッドフォンである。
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スピーカーではすでにトゥイーターとして実用化されているハイルドライバーの応用という特殊型だ。中音域は広い音域にわたって全体に自然だが、高音域のごく上の方(おそらく10数kHz)にややピーク性の強調感があって、ヴォーカルの子音がややササクレ立つなど、固有の色が感じられる。が、そのことよりも、弦のトゥッティなどでことに、高音域で音の粒が不揃いになるように、あるいは滑らかであるべき高音域にどこかザラついた粒子の混じるように感じられ、ヨーロッパ系のヘッドフォンのあの爽やかな透明感でなく、むしろコスHV1Aに近い印象だ。低音がバランス上やや不足なので、トーンコントロール等で多少増強した方が自然に聴こえる。オープンタイプらしからぬ腰の強い音。かけ心地もかなり圧迫感があって、長時間の連続聴取では疲労が増す。直列抵抗を入れた専用アダプターがあるが、スピーカー端子に直接つないだ方が音が良いと感じた。
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ESSのラインナップにヘッドフォンはあるが、ハイルドライバーではない。
リエイゾン・オーディオからもATM方式のヘッドフォンは登場している。
こちらは全体域をATMでカバーしているわけではなく、2ウェイとなっている。
私が欲しいのは、くり返すがK1000のハイルドライバー版であり、
ハイルドライバーの同相ダイボール型という特性は、K1000と同じ構造にぴったりといえる。
と同時に、瀬川先生が「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」で指摘されていること。
この点は、ESSのヘッドフォン固有の問題とは捉えていない。
以前エラックのCL310を鳴らしていた。
そのとき、同じようなことを感じていたからだ。