瀬川冬樹氏のこと(ヴィソニック David 50・その3)
B&Oのスピーカーシステムは、それまでにわずかとはいえ聴いたことがある。
Beovox MS150などを、ステレオサウンド試聴室で聴いている。
惚れ込むまではいかなかった。
B&Oはデンマークのメーカー。
でもそのスピーカーの音に、北欧的なものを感じることはできなかった。
同じトランスデューサーでもカートリッジのMMCシリーズの方が、
なるほどB&Oは北欧のメーカーなんだ、ということを認識させてくれていた。
MMCシリーズの音を、無意識にBeovoxシリーズにも期待していたのだろう。
勝手な期待とは違う音が出てきただけのこと、ともいえよう。
そんなことがあったからCX100から、MMCシリーズに通ずる音が鳴ってきたのには、嬉しくなった。
10cm口径のコーン型ウーファーを上下に配し、中間にドーム型トゥイーターをはさむという、
いわゆる仮想同軸配置をとる、このスピーカーのエンクロージュアもまたアルミ製である。
ヴィソニックのDavid 50もアルミ製のエンクロージュアで、10cm口径のウーファー。
しかもエンクロージュアの横幅は、ユニット幅ぎりぎりにおさめられている。
LS3/5Aも10cm口径ウーファーだが、エンクロージュアの横幅は19cm、
CX100は11cmと、David 50も10.7cmとここにも共通するところがある。
それにCX100もDavid 50も、さまざまな使い方に対応できるようブラケットも用意されていた。
壁にかけることもできた。机の上に置くのもいい。
専用スタンド上に置いて、
スピーカー壁から十分に離したセッティングを要求するスピーカーとは、ここが違う。
しかも高価なアンプも要求することもない。
もちろんアンプのグレードを高めていけば、それに対応していくが、
それこそBOSEが101MM用に発売した1701で、魅力的な音が損なわれてしまうことはない。
細やかでいながら、芯のしっかりした音は、David 50と共通するところであろう。
瀬川先生が「続コンポーネントステレオのすすめ」で書かれたことをもう一度引用しておく。
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たとえば書斎の片すみ、机の端や本棚のひと隅に、またダイニングルームや寝室に、あまり場所をとらずに置けるような、できるだけ小さなスピーカーが欲しい。しかし小型だからといって妥協せずにほどほどに良い音で聴きたい……。そんな欲求は、音楽の好きな人なら誰でも持っている。
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CX100は、まさにぴったりといえたし、そのクォリティは、ほどほどに、というレベルを超えていた。