Date: 8月 19th, 2016
Cate: ステレオサウンド
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ステレオサウンドについて(その64)

ステレオサウンド 52号(1979年9月)のころになると、
アンプの動特性の向上が各メーカーの目標となり、謳い文句にもなっていた。

カタログにはスルーレイトやライズタイムの項目が加わってきたし、
アンプによってはNFB量を記載しているものもあった。
けれどこれらの動特性も、静特性も、すべて抵抗負荷で測定された値である。

実際にスピーカ実装時に、静特性がそのまま保証されているかというと、
おそらくそうでないことは誰もが思っていても、
では実際にどうやって測定するのか、その測定方法が各社で統一されていたわけではなかった。

52号でのダミースピーカーを負荷とした測定が、すべてにおいて理想的かといえばそうではない。
けれどとにかく、抵抗負荷でしか測定されてこなかった(発表されてこなかった)特性を、
ダミーとはいえスピーカー実装時といえるところで測定している意義は大きい。

実際に52号に掲載されている測定データは興味深い結果となっている。
よく高NFBのアンプの歪率は逆レの字型になる傾向がある。
最大出力あたりで歪率は最小になり、それ以上は急激に歪が増す。

52号に登場するアンプにも、そういうアンプがある。
そういうアンプはダミースピーカー負荷だと混変調歪率のカーヴが、
抵抗負荷のカーヴと大きく違ってくる。
歪率もかなり大きくなる傾向にある。

そういうアンプがある一方で、抵抗負荷とダミースピーカー負荷のカーヴが割と近いアンプもある。
そういうアンプは歪率の増加はそれほど大きくない。

抵抗負荷、ダミースピーカー負荷のカーヴはほほ同じというアンプは、
数は少ないながらある。歪率も同じといえる。
GASのGODZiLLAである。
QUADの405もGODZiLLAほどではないが、かなりふたつのカーヴは近い。

おもしろいのはスレッショルドの4000 Customで、
抵抗負荷よりもダミースピーカーの歪率が低い。
抵抗負荷では少しうねっているのが、ダミースピーカー負荷の方だと素直なカーヴになっている。

全高調波歪はオシロスコープの画面を撮影したものが掲載されているので、
歪率の大小だけでなく波形の状態も確認できる。

52号の測定データは一機種あたり1/2ページというスペースだが、飽きない。
そこから得られることは、当時よりもいまのほうが多い。

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