トランスから見るオーディオ(その25)
トランスはプリミティヴなパーツである。
にも関わらず理想に近いトランスの実現は不可能であり、
トランスほど、優れたモノとそうでないモノとの差は大きい。
抵抗やコンデンサー、コイルといったパーツよりも、その差は大きい。
しかもきちんと使いこなすためには、意外にもノウハウが必要となる。
それに良質のトランスは昔から高価でもあった。
真空管アンプの出力インピーダンスをただ単に下げるだけなら、
ライントランスを使うよりも終段の真空管をカソードフォロワーにしたほうが、
コスト的に安くなるし、性能的にも優れたなのになる。
それでもあえてトランスを選択する人がいる。
オーディオに興味をもった40年前。
最初に疑問に感じたのは、なぜアンプにしても、すべてのオーディオ機器はアンバランスなのか、
ということだった。
オーディオ信号は交流である。
交流はプラスとマイナスが反転する。
ということはプラスとマイナスは同条件の必要がある。
そうでなければ行って帰ってくることができないのではないか。
まだアンプの動作に関しても何も知らない13歳の私はそんな疑問をもった。
そして次に考えたのは、もっともわかりやすいモデルを考えた。
つまりカートリッジがスピーカーをドライヴすると、という最も単純なモデルである。
イコライザーカーヴがあるのは知っていたけれど、ここでは単純化のために無視する。
とにかくカートリッジが非常に高能率で、スピーカーも同じように高能率である。
カートリッジの出力をそのままスピーカーにつなげば、きちんとした音量と音質が得られる。
そういう、現実には在りえないモデルを想像したうえで、あれこれ考えていった。