世代とオーディオ(赤坂工芸のこと)
赤坂工芸ときいても、いまでは知らない世代の方が多くなったのかもしれない。
私と同世代、上の世代でも、
ホーン型スピーカーに関心のなかった人にとっても、あまり記憶に残っていないようだ。
私がオーディオの世界に関心を持ち始めたころには、すでに赤坂工芸はあった。
木製のディフラクションホーンの専門メーカーとして、はじめのうちは認識していた。
1978年秋のステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEには、
赤坂工芸のホーンは四種類載っている。
PH8008T1、PH5005MKIIT1、PH8005MKIIT2、PH9005MKIIT2である。
型番末尾のT1とT2はホーンのふちの断面の形状の違いをあらわしており、
T1は角形、T2は丸型であり、T1使用時にはJBLのスロートアダプター2328が必要となる。
T2には専用のスロートアダプターが付属していた。
赤坂工芸のホーンは、JBLの2397と基本的には同じだが、
同じ木製ホーンでも2397が4.4kgに対して、ほぼ同寸法のPH8008T1は8.0kgと倍近い。
PH8005MKIIT2とPH9005MKIIT2はさらに重く、14.0kgとなっている。
赤坂工芸のホーンに、当時は憧れていた。
JBLのホーンで使いたかったのは、いわゆる蜂の巣の537-500(HL88)と2397だったのだが、
2397よりも精度が高そうに感じられた赤坂工芸のホーンは、なんとも魅力的だった。
けれど高かった。
1978年当時で、PH8008T1は98000円、PH9005MKIIT2は173000円していた。
2397は38000円だった。
1980損にはPH8008MKIIT1は138000円に、PH9005MKIIT2は216000円になっている。
2397も少し値上がりして48000円である。
余談だが当時赤坂工芸のホーンとほぼ同価格だったのが、
アコルトのディフラクションホーンMD501だった。
2397とほぼ同寸法のこのホーンは大理石でできていた。
価格は1978年の時点で200000円していた。重量は20.0kgである。
聴く機会はなかった。
いまでも聴いてみたいホーンであることは、当時から変らぬままである。
いまも赤坂工芸はある。
残念ながらというへきか、当然というべきか、
スピーカー作りはやめてしまわれている。
現在はCD制作をされていることがわかる。
ウェストレックスのRA1775は赤坂工芸のPHG5000の型番で市場に出ていたようだ。
ステレオサウンド 60号の写真とはレベルコントロールのパネルとフロントバッフルの色が違うが、
基本的には同一仕様である。