岩崎千明と瀬川冬樹がいない時代(その3)
アンプでいえばSAEに関して、同じような印象を抱いた。
SAEのパワーアンプMark2500は、マークレビンソンのML2を導入されるまでは、
瀬川先生にとってメインとなるパワーアンプだった。
Mark2500は欲しいと思っていた。
けれど改良型(というよりもパワーアップ版)のMark2600は、
Mark2500と比較すると改良されているとは言い難かった。
SAEのその後、輸入元がRFエンタープライゼスから三洋電機貿易に変った。
パワーアンプのラインナップも一新された。
Xシリーズ、その後のAシリーズ、
価格的にも性能的にもMark2500と同じクラスのモデルもあった。
けれど、欲しいと思うようなところが感じられなかった。
スレッショルドにもそんな感じを持っていた。
800Aというデビュー作、STASISシリーズと、
私にとってスレッショルドは注目のメーカーだった。
けれどSTASISシリーズに続いて登場したSシリーズ(STASIS回路を採用)を見た時、
STASISシリーズにあった色がなくなり、音もそれほどの魅力を感じさせなくなっていた。
スレッショルドは800Aの印象が強く、
第二弾にあたる400A、4000 Customは優秀なアンプという印象に留まるところもあった。
そしてSTASISシリーズ。
つまり私の印象ではSシリーズの次のモデルには期待できるはず、という期待があった。
けれど……、である。
SAEもスレッショルドもどうしたんだろう、と思った。
こういう例は他にもいくつもある。
瀬川先生ということでマークレビンソンについて書き始めたから、
アンプメーカーのことばかり続けてしまっただけで、スピーカー、アナログプレーヤー関係など、
いくつかのメーカーが、それまでの輝きを失っていったように感じていた。
メーカーにも好調な時と不調な時があるのはわかっている。
たまたま不調と感じられる時期が重なっただけのことなのだろうと思うようにした。
だから、このことはしばらく誰にも話したことがなかった。
それから10年ぐらい経ってだった、
よくオーディオについて語っていた知人に、このことを話した。
彼は「そんなの偶然ですよ」だった。
そうだろうと思っていた答が彼の口から出ただけで、がっかりしたわけではなかった。
たぶん多くの人が(というよりほとんどの人が)、彼と同じように答えたであろう。