ハイ・フィデリティ再考(違う意味での原音・その2)
UREIの813の音を、瀬川先生は《まるでコダカラーのような色あいのあざやかさ》と表現されているが、
これが岡先生となるとどうなるのか。
瀬川先生と岡先生の音の聴き方はずいぶん違っているところがあるのは、
ステレオサウンドを熱心に読んできた読み手であれば承知のこと。
UREI 813が登場したステレオサウンド 46号の特集記事に岡先生も参加されている。
解説と試聴記を担当されている。
その試聴記には音の色合いに関しては、特に書かれていなかった。
46号は1978年3月に出ている。この年暮に出た「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
岡先生は813を使った組合せをつくられている。
そこでは、こう述べられている。
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UREIモデル813というスピーカーは、かなりコントラストのついた音をもっています。たとえていえば、カラー写真のコントラストというよりも、黒と白のシャープなコントラストをもった写真のような、そんな感じの再生音を出してくるんです。
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《まるでコダカラーのような色あいのあざやかさ》と《黒と白のシャープなコントラスト》、
瀬川先生の評価と岡先生の評価、
それぞれをどう受けとめるか。
私は、というと、実のところ813は聴く機会がなかった。
ステレオサウンドの試聴室で聴いた813は813Bになっていた。
輸入元も河村電気研究所からオタリテックに変っていた。
メインとなるユニットもアルテックの604-8Gから、
PAS社製ウーファーとJBLの2425Hを組み合わせた同軸型に変っていた。
オリジナルの813の音は聴けなかった。
いまも、ぜひとも聴いてみたいスピーカーのひとつである。
おそらく私の耳には、《まるでコダカラーのような色あいのあざやかさ》と聴こえるだろう。
だからといって、《黒と白のシャープなコントラスト》と聴こえる人の耳を疑ったりはしない。
ここに音の色の、人によっての感じ方の違いがあるからだ。