KEF Model 109 “The Maidstone”(その5)
ステレオサウンド 54号。スピーカー特集でとりあげられたKEF Model 105SeriesIIの、
瀬川先生の試聴記。
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数ヵ月前から自宅でリファレンス用として使っているので今回の試聴でも物差しがわりに使った。とくに、音のバランスが実によく練り上げられている。しかしこのスピーカーの特徴を聴くには、指定どおり、いやむしろ指定以上に、中〜高音域ユニットと聴き手の関係を、できるかぎり正確に細かく調整する必要がある。左右のスピーカーの正しい中央に坐り、焦点が合うと、スピーカーの内中央に歌い手が確実にそしてシャープに定位し、たとえば歌手の声(口)の位置と伴奏との、音源の位置──左右、奥行、そして(信じ難いことだが)高さの相違まで、怖いようなシャープさで鳴らし分ける。ただこのスピーカーの音色は、やや抑制の利いた謹厳実直型、あるいは音の分析者型、で、もう少し色っぽさやくつろぎが欲しくなることがある。また、ポップスではJBL的なスカッと晴れ渡った音とくらべると、ちょっと上品にまとまりすぎて物足りない思いをする。それにしても、価格やサイズとのかねあいで考えれば、たいした製品だ。
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このスピーカーシステムを指定以上に正確に細かく調整された音を、
しかも左右のスピーカーの中央で聴いた人はそういない、と思う。
聴いていない人は、この試聴記に書かれていることを信じられないかもしれない。
《焦点が合うと、スピーカーの内中央に歌い手が確実にそしてシャープに定位し、
たとえば歌手の声(口)の位置と伴奏との、音源の位置──左右、奥行、
そして(信じ難いことだが)高さの相違まで、怖いようなシャープさで鳴らし分ける。》
こう書いてある。
でも、これは決して誇張でもなんでもない。
私が熊本のオーディオ店で、瀬川先生が調整されたModel 105で聴いたバルバラのレコードは、
まさにここに書かれているとおりの音だった。
KEFのmodel 105を、
瀬川先生は《敬愛してやまないレイモンド・クックのスピーカー設計理論の集大成。》とされている。
(ステレオサウンド 47号より)
Model 105はレイモンド・クックの集大成といえるスピーカーシステムである。
1970年代までのクックの集大成である。
では1980年代以降の集大成は……、となる。