オーディオの公理(その5)
マイケルソン&オースチンのパワーアンプTVA1は、1978年にイギリスから登場した。
出力管のKT88、クロームメッキのシャーシーという共通性から、
現代のマッキントッシュMC275といういわれかたもされた。
真空管アンプ、それもパワーアンプの代表的な機種としてMC275は、広い世代から挙げられることが多い。
マランツのModel 9と違い、いかにも真空管パワーアンプといえるルックス、
五味先生が愛用されたパワーアンプ、
私も真空管パワーアンプとしてMC275をイメージすることは多い。
その意味でTVA1の音も、開発年代の新しさがその音にあらわれているといっても、
誰が聴いても真空管アンプだと認識してしまうものをそなえていた。
TVA1をブラインドフォールドテストで聴かされて、半導体アンプだと思う人はほとんどいないと思う。
そのくらいに真空管アンプの音としての特徴が、TVA1の音の特徴でもある。
ラックスのLX38、マイケルソン&オースチンのパワーアンプTVA1と聴いてくると、
真空管アンプには、やはり真空管アンプならではの音の特徴がある、ということになる。
たったふたつのサンプルとはいえ、共通する良さ、
しかもその良さは、そのころの最新のトランジスターアンプからはなかなか聴けない良さであったのだから。
けれどこのころになると、アメリカから真空管を使った新しい世代のコントロールアンプがいくつか登場しはじめる。
ビバリッジのRM1+RM2、プレシジョン・フィデリティのC4、ミュージック・レファレンスのRM5、
コンラッド・ジョンソンのPreAmplifier、カウンターポイントのSA1などである。
これらのコントロールアンプをブラインドフォールドテストで聴かされたら、
すべてを真空管アンプだといいあてることはなかなかに難しいのではないだろうか。