「いい音を身近に」(その15)
テクニクスのコンサイス・コンポ一式をむかえ入れられたとき、
黒田先生の部屋にはスピーカーはJBLの4343、パワーアンプはスレッショルドの4000、コントロールアンプは、
まだこのときはソニーのTA-E88(マークレビンソンのML7Lを導入されるのはまだ先のこと)だった。
この「より大がかりな装置」では、
「マーラーのシンフォニーをきくことも、リヒャルト・シュトラウスの楽劇をきくこともある」一方で、
「レコードによっては、スピーカーとききての間に生じる濃密な空気を求めて、
キャスターのついた白い台の一式できくことになるだろう」と書かれている。
「より大がかりな装置」は「小型の装置」よりも、「呼ばなかったであろうレコード」は少なくなる。
言いかえれば、「装置の呼ぶレコード」の数(種類、ジャンルの幅)は増えて広がっていく。
オーディオ機器としての能力が高いのは、呼ぶことのできるレコード(音楽)の多さ・広さと比例している、
そんなふうにいえるところがある。
けれど、黒田先生は「濃密な空気」を求めるときは、
「呼ぶレコード」の数・広さの少ない・狭い「小型の装置」を選ばれる。
さらに黒田先生はこうも書かれている。
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もし小編成のグループによって演奏された、ことさらダイナミックな表現力を必要としない音楽をおもにきくという人なら、この一式をメインの装置としてつかえるにちがいない。
もっとも、SU−C01+SE−C01を、一般的な使い方で──ということは、フロア型スピーカーにつないで、ききてが一定のリスニング・ポジションできくという使い方でということなら、その限りではない。
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そう、あくまでもアンプだけでなくプレーヤー、スピーカーを含めての装置一式を、
キャスターつきの台の上にのせて、という条件があったうえで、
「濃密な空気」を求めるときに聴くものであったり、
「ダイナミックな表現を必要としない音楽」とってはメインの装置として使える、ということである。